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【かぶりつき一代目 祖母】
リーマン妻一代目。
柱に当たれば柱が悪いとわめく明治の女。
農村で裕福に生まれ育った彼女は夫が稼いできた現金を手に証券会社に走ったのだ。
時は昭和初期の中産階級が台頭してきたころだ。世の中の価値は土地から現金に移っていた。
母と祖母の電話の会話といえば、上がったの、下がったの。売ったの、買ったの。
当時、最も手に入れやすい情報は口こみ、人づたえであった。
彼女は取引先の証券マンに言われるままに巨額を株につぎこみ、よくすっていた。(母曰く)
「下がる株が悪い。」(祖母曰く)
いつか祖父がもらしているのを聞いたことがある。
「望遠鏡が欲しいんだ…。」
孫の私は「おじいちゃん、買えばいいのに。」と。
でも祖父は遠くを眺め、ため息まじりに言った。
「でも、ばあさんが全部お金持っていくんだ。」
おじいちゃん、なんて可愛そうなの!っと幼な心に思ったものだ。
しかし年月が流れ、祖母と同じことをしていることに最近気がつく。
【かぶりつき二代目 母】
リーマン妻二代目。
柱に当たれば柱をなでてやる昭和の菩薩様。
母のかぶりつきのきっかけは知らない。
もの心ついたころには給料天引きで夫の会社の自社株を月々買い足していたようだ。
450円前後だったその株が1000円近くまで上がったときは家中を巻き込んでの大フィーバー!
バブルの幕開けだった。
彼女はかなりもうけたはずである。確かこの時、「何か買ってあげるわね!」と頬を紅潮させて子ども達に言っていた気がするが、あの話とあのお金は一体どこにいったのだろう…。
わたしはこんなお母さんにはならないわ!っと子ども心に思ったものだ。
しかし月日が流れ、母と同じことをしていることに今、気付く。
朝食の会話はもちろん新聞片手に上がったの下がったの。株価欄はもちろんのこと、経済欄は端から端までじっくり読む。彼女の情報源は専ら新聞、雑誌、そして彼女の研ぎ澄まされた感性。彼女の夫はいつ新聞にありつけたのだろう…。
筑波博で大きなトマトを見た母は「バイオの株よ!」
バブルの到来を感じると「建設株よ!ゼネコン株よ!」
政府が内需拡大を叫び始めると「内需関連株が来るわよ」
郵便番号7桁が決まると、「印刷業が儲かるはずだわ」
株のツボは情報収集と時代の先読み。
かぶりつき三代目は幼い頃から肌で株の心得を習得していったのだった。
【かぶりつき三代目 娘】
リーマン妻三代目。
柱に当たれば柱をなぎたおす女。
女三代に渡り受け継がれてきたかぶりつきの血は絶やされることはなかった。永らく眠っていたその熱き血は数十年の時を得て平成の今、ここに甦る…。
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