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interview in 2004

海外協力にかける思い  坂口和隆さん NGOシャプラニール 事務局長

事件に遭遇
地球の上の座標
ガテン
ココロの豊かさ
子どものもつ生きるチカラ
坂口 和隆 (さかぐち かずたか) さん
1961年生。西東京市柳沢在住。91年から国際協力NGO、シャプラニール=市民による海外協力の会の活動に参加、現在は事務局長。
西東京市では障がいを持つ子どもたちの学びの場を考える会「はっきぃねっと」、学童クラブ連絡協議会の活動に関わる他、市民参加条例策定のための「まちづくり市民会議」(2001年)、「西東京市市民との協働推進懇談会」(2002年)、西東京ボランティア・市民活動センター強化プラン委員会(2003年))、子どもアミーゴ西東京に参加。2006年現在、西東京ボランティア・市民活動センター強化プラン委員会運営委員長。中央共同募金会 企画・推進委員。 共著に「いっしょにやろうよ国際ボランティア」(三省堂)
ネイチャーアクアリウムとブルースハープが趣味。

天安門事件に遭遇したことをきっかけに、海外協力へ・・・


■ 事件に遭い、どのように感じましたか?また経緯を教えてください。

天安門事件は中国に留学していた2年目の1989年に起こりました。事が起こった当初は中国政府側も学生に対して好意的で、学生証を見せれば北京までの鉄道運賃が無料になるというサービスぶりでした。それが首相と学生とのテレビ討論の中で首相が学生に「メンツ」をつぶされるような場面があって、危ないなぁと思っていたところ、案の定、手のひらを返すように対応が変わりました。私の学んでいた大学からも何十名かが北京に行きましたが帰ってこなかった人もいるようです。それまで青少年交流ということで安穏と暮らしていた留学生生活が一変しました。北朝鮮の留学生もいて、彼らが国費留学生として決死の覚悟で学びに来ていたところを目の当たりにしたこともあり、国家と個人との関係性について考えさせられました。同時に私が立つ地球の上の座標はどこなのかということについても考え始めるきっかけとなりました。
帰国後は地球環境関連の国会議員連盟の仕事をするかたわら、シャプラニールでは識字関係のボランティアグループに所属してワークショップを通じての広報活動に携わりました。91年4月に事務局スタッフに欠員が出て、有給スタッフとしてより深く活動に係わり始めた次第です。

■ 最初に任された活動は、どんな事でしたか。
スタッフになってからは、はじめバングラデシュの女性たちが制作する手工芸品を国内で多くのボランティアの協力を得ながら販売するセクションに配属されました。毎日注文を取りながら倉庫では発送作業を繰り返す半ば「ガテン」な仕事でした。

■ 当時、実際にNGOの活動を始めて気が付いたこと、感じたことはありますか?

91年当初はNGOと言ってもほとんどの人が「ボランティア活動でしょ。立派ねぇ」というような認識でしたから、一般の人たちの理解を得ることは並大抵ではありませんでした。またシャプラニールは当初から単に途上国の貧しい人たちを助けてあげるというようなスタンスではなく、対等の立場でモノを考え、自分たちの暮らしも見直していくことが必要だという姿勢を強く打ち出していたので、私のような国際協力の経験がない人間でも国内の様々な市民活動とのネットワークを築くことに注力することで会の活動に携わることができたかなと思います。

■ NGO以外にも、学童クラブ連絡協議会やはっきぃねっと、まちづくり市民会議などの活動に参加されていますが、こちらにかける想いも聞かせていただけますか?
本業以外にも日本国内の地域の課題に関わっていきたいという想いは、自分の子どもが生まれ、それまでのただ「寝る場所」から「生活する場所」として自分の地域を見られるようになったことが大きいと思います。子どもができれば様々な形で地域との接点ができますからね。
特に障がい児や学童など、子どもに関わるイシューには今後もずっと関わっていきたいと思っています。また、本業との関係で言えば、今、NPOをはじめとする市民セクターと行政との協働の必要性が叫ばれていて、自分の地元ではどういう協働が行われているのか、市民参加はどうなっているのかが気になって、西東京市で市民参加条例案を市民参加で作るというまちづくり市民会議の委員に応募しました。
国際協力の仕事をしていると、どうしても現地のことばかり考えるようになりますが、よく考えれば人の生活や営みなどは場所が変わっても共通するところが非常に多い訳で、地元での活動することにより、子育てやまちづくりなど、同じ課題に取り組む人間同士として地球社会の「共生」を実感できます。地元での活動はそう言う意味で「生活者」としての視点を持つためにも大切にしていきたいと思っています。もちろん当事者としての関わりが一番大事ですが…。



それではNGOの具体的な活動を追いながら、いろいろお話を聞かせてください!

ネパールやバングラデシュで行っているシャプラニールの活動

バングラデシュでは、農村で「ショミティ」という、貧しい農民たちが集まって作る生活向上のための相互扶助グループの活動を、首都ダッカで、路上で生活する子どもたち「ストリートチルドレン」のための「ストリートスクール」や「ドロップインセンター」の運営を主に支援。スクールは教育的な効果よりも、まずは大人への不信を和らげる事を目的としている。

■ 村の子どもたちの一日の生活はどのようなものですか。

村の子どもたちと言っても学校に行っている子、行っていない子、バザールで働いている子など様々です。ここでは学校に行っているある子どもの一日をご紹介します。朝起きるとまずマドラッサというイスラム教の宗教学校に行ってコーランの勉強をします。その後うちに帰って朝食を食べ、親の仕事を手伝ったり友だちと遊んだりします。学校が12時からなので早めの昼食を取り学校へ。学校から帰るとショミティメンバーの子どもはシャプラニールの補習学級へ。夕食を食べて20時頃には寝ます。

■ ストリートチルドレンが、スクールに来る一番の理由(きっかけ)はなんでしょうか。

シャプラニールのパートナーNGOのスタッフが日頃から子どもたちが働いている地域を回り、声をかけるところから始まります。スタッフは地回りのヤクザや警官、コミュニティの人たちとも顔見知りで、地元情報に通じています。子どもたちもストリートスクールでは歌や踊りをまじえながら勉強できたり、簡単なケガの治療をしてくれたりする所だということを口コミで知っているようです。

■ 心の面でフォローしてあげるために大事なことは何だと思いますか?
大人からさまざまな仕打ちを受けてきた子どもたちの信頼を取り戻すためにいちばん大事なことは、子どものもつ生きるチカラを尊重し、彼ら彼女らの現在の立場を否定することなく、まずはしっかり話を聞くことです。

■ 日本の子どもたちの中にも、大人に対する不信感や未来への不安を持っている状況が一部にあると思います。大事なことは「しっかりと話を聞く」。これは日本でも共通して言えますか?
もちろん言えると思います。ストリートチルドレンとは状況が違いますが、子どもの主体性が尊重されていないという点では日本も同じでしょう。

■ 子どもたち自身がセンターの活動を運営したり、日常生活で直面するさまざまな問題について話し合う機会が、ドロップインセンターにはあるそうですね。
子どもが単なる受益者ではなくプログラムに主体的に参加することはとても重要です。ドロップインセンターで月に一回行われている「子どもの日」では子どもたちが運営側や先生の役割を体験することでこのセンターが自分たちのものであるという気持ちを強く持つことができました。
その他の子ども参加として、センターのルールや要望を話し合う子ども会議、問題解決を子どもたち自身が行う子ども調停委員会などが開かれています。「子どもの日」は大人の役割を演じてみるだけですが、子ども会議や子ども調停委員会はまさに自治への方向性が打ち出されていると思います。昨今はコミュニティにおける「子どもの参画」というのが国内外で一つのキーワードになっています。

市民参加の海外協力をめざして 国内での活動

バングラデシュとネパールの女性たちが作った「手工芸品の販売 (伝統刺しゅうノクシカタダッカ織り手すき紙 など)」や、日本の子どもたちが現地を訪れる「わくわく子ども企画」、写真や手工芸品を使って学ぶ「開発教育」、不用品を役立てる「ステナイ生活」等、様々な活動を実施。

■ 現地の実状と日本の認識にギャップはありますか。
国際協力の場合、確かに通常ではなかなか行くことのできない場所が現場になっているので、国内活動では日本の人たちに現場で起こっていることをいかにリアルに感じてもらうかに注力します。伝わり切れていないなぁといつも思うことは、モノの豊かさとココロの豊かさのギャップです。物質的に豊かでないイコール努力しないからだとか、教育がないからだと思ってしまう人がまだまだいます。現地を訪れた人は必ずと言っていいほど、私たちより豊かだと思うようになります。

■ 「わくわく子ども企画」や「開発教育」に参加した子どもたちの反応はどんな様子ですか。

わくわく子ども企画では昨年、小学4-6年生がバングラデシュを訪れ、村の子どもたちと交流したり、ストリートチルドレンのドロップインセンターに行ったりしました。西東京市からも2名が参加しました。子どもたちは言葉にはなかなか表せませんが、本当の豊かさについて考えさせられたようです。開発教育でも単に貧しい=かわいそうという構図を崩すような教材づくりを心がけていて、現地に行かないまでも疑似体験するなかで豊かさについて気づくようなワークショップを行っています。

■ 現地のカレーを作って食べてみるイベントも子どもたちにとっては大きな体験学習になりますね。
この企画も各新聞に取り上げられています。西東京市では保谷二小の子どもたちが参加する予定です。

■ 手工芸品の販売では、多すぎない適度な発注を心がけていると聞きましたが?

一度にたくさん発注することは注文が増えるから収入も増えるだろうと考えがちですが、女性たちの家事に支障が出たり、子育てがおろそかになるおそれもあります。この辺りが単なるビジネスとの違いです。詳しくは2003年2月に策定した手工芸品活動指針をご覧下さい。

■ たくさん売ってたくさん買った方がいいのでは、と思ってしまいそうな私たち自身にも、ココロの余裕が必要ですね。坂口さん自身は、ココロの豊かさを保つために、日ごろから意識していることはありますか?
現代人はとかく先のことにココロを奪われ「いま」をおろそかにしがちです。個人的に大切だと思っているのは「いま、ここ」であり、この瞬間に自分がどういう気持ちでいるのか、感情の流れを自覚していることだと思います。もう一つ、最近意識しているのは、「生きとし生けるものを生きとし生けるものとしてみる内的姿勢を保ち続ける」ということです。まぁ手っ取り早く言えば他人はヒトではないような態度を取ることなく、どんな人も無視せずヒトとして真向かう、道端の花にもいのちを感じるなんてところでしょうか。もちろん、これは心がけているだけで、すれ違う人たち全員に会釈していたら間違いなくヘンなヒト扱いされるでしょうが…。

企業と協働 ブックオフやインターネットでも協力 

古本のリサイクルを利用した寄付「ステナイBook」、広告を見ることでチャリティ「クリック募金」  etc.

■ 国内では、古切手やテレカ、はがきの収集、最近ではブックオフとの提携、クリック募金なども行っていますが、今後、企業やインターネットに期待していることはありますか?

シャプラニールでは「企業との協働」を国内活動の一つのテーマに掲げています。単なる支援のお願いにとどまらず、双方の長所を活かしながら社会に貢献できることを果たしていく、「win-win」の関係(敗者のいない関係)を作っていくことが必要だと考えます。おりしも「企業の社会的責任(CSR)」が叫ばれている現在、こうした協働の関係はますます求められていくのではないでしょうか。
もう一点、企業を構成する社員個人のボランティア活動も盛んになってきています。社員のボランティア活動を企業がバックアップしていく形も今後ますます望まれます。
インターネットについては大きな媒体を利用できないNPOの有力な広報媒体として、また地球的課題について情報交換を行うツールとして以前から活用してきました。ウェブやメールによる広報やファンドレイジング(資金調達)についての期待は膨らみますが、それに加えてアカウンタビリティ(説明責任)を果たすためのツールとしても今後は活用していく必要があるでしょう。

■ これからボランティアや、NGOの活動に参加してみようと思う方にメッセージをお願いします。

NGO/NPOはそのミッション(目指すもの)や組織の在り方が千差万別です。会社なら業種で大体は想像できますが、NGO/NPOは関わってみなければ分からないことも少なくありません。まずは気軽にアプローチしてみて自分に合うかどうかを確かめることから始めてはどうでしょうか。いわばつまみ食いですね。関わってみて自分に合いそうだったら続ければ良いし、合わないようなら他を探せばよいでしょう。要は自分のミッションと団体のミッションがうまくマッチさせることです。

■ 最後に、今、坂口さんが力を入れていることはなんですか?

市民活動にはさまざまな分野があります。また実にユニークな人たちがいます。異なる畑の人との交流によって、新たな発想を得るため、組織を離れた個として社会の方向性を考えるため、社会システムをどう進化させていくかをマジメに語れるような人たちとのネットワークには力を入れています。
地元では子どもたちがイキイキと過ごせる街づくりを目指して学童クラブの環境整備、障がい児が普通学級に通う際の公的介助員制度の導入などに力を入れています。
個人的には趣味のネイチャーアクアリウムのお魚たちがどうも最近よくお亡くなりになるので、水質改善をしたいなぁと思っています。

ありがとうございました!

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